2014年6月16日月曜日

俺とうらら。


飛龍を亡くしてから、俺はもう犬は飼わないと決めた。


そしてそれから、実際に犬を飼うことはなかった。



だが、いまから9年ほど前、俺は37歳の時に結婚した。


相手はバツイチの子持ちで、ふたりが住んでいた家に俺が転がり込む形で一緒に暮らすことになった。


そしてその家では、犬を飼っていた。


それが「うらら」だ。


うららは、細い体格の雑種で、ぶっちゃけ可愛くなかった(笑)


でも、途中から自分の家に転がり込んできた俺にも、すぐに懐いてくれた。


俺が仕事から帰ってくると、鎖につながれたまま後ろ足で立ち上がって、前足をバタバタしながら喜んで迎えてくれた。


でも、途中から成り行き上、飼い犬となったうららに、正直あまり愛着というものはなかった。


俺がエサを作ってあげるということもなかったし、散歩に連れて行ってやるということもなかった。


そんなうららが、ある日突然死んだ。


嫁が洗濯物を干しているときに、冷たくなって動かなくなっているうららに気づいた。


死因はよくわからないが、たぶん夏場だったので蚊が原因でなる病気だったのではないだろうか。


夜、仕事から帰ってきて、うららが死んだことを聞かされた俺は、雨のなか裏庭に穴を掘って、うららをそこに埋葬してやった。


特に可愛がっていた犬ではなかったが、やはり死んでしまったのはかわいそうで、もっと可愛がってやればよかったな…とか思っていたら、穴を掘りながら涙が出てきた。


今度は人間に生まれかわってくるんだぞ。
…と思いながら、雨の降る中うららの死体を穴の中に埋めてやった。



その数日後、ちかくのホームセンターで植物の種を買ってきて、うららを埋めた場所に植えてやった。


こうすれば、ここにうららが眠っているというのがわかるし、木が育って花が咲けば、うららのことを思い出してやることができる。


そう思って、俺が嫁に提案したのだ。
うららを埋めたところに、何か木を植えてやろう…と。


そして、いまでもそこには「うららの木」が生えている。
大きい木ではないし、名前も知らない木だが、ちゃんと生えている。


そして、その木を見ると、たまにはうららのことを思い出す。
当時まだ生まれていなかった息子にも、「ここには、お前が生まれる前に飼っていた、うららっていう犬が眠っているんだよ」と話して聞かせている。


…以上が、俺のいままでの人生で関わってきた主な犬たちとの物語だ。


もしかしたら、この先また新しい犬との出会いがあるかもしれない。
いや、たぶんあるだろう。


いま小学3年の息子が、近い将来どこかできっと子犬でも拾ってくるはずだから。
そしたら、また俺と犬との新たな物語が生まれることだろう。



2014年6月15日日曜日

俺と飛龍。


俺が中学1年のときに、下校途中に拾ってきたのが飛龍(ひりゅう)だ。


シェパードっぽいカラーリングの雑種だが、とても利口でおとなしい犬だった。
この飛龍は、結局15年近くも生きた。


12歳の時から27歳くらいまで飼っていた、俺の犬人生のなかでもっとも長い付き合いだった犬だ。


15年も飼っていると、まだガキだった高校生くらいの時には、飛龍をいじめたりしたこともあった。


鎖につながれている飛龍を、パンチで殴ったりしていた。
いま思い出してもひどい話だ。


いくらガキだったからといって、本当にあの頃は飛龍に申し訳なかったと思って後悔している。



そんな過去があったにも関わらず、俺が社会人になり、仕事から帰ってきたらいつも飛龍は嬉しそうに小躍りするように駆け寄ってきてくれた。


その姿は、いまでも鮮明に思い出すことができる。
ほんと、生涯忘れることのできない犬だ、飛龍は。


そんな飛龍との別れは、突然訪れた。


飛龍も老体になってからは、近所の人にも可愛がられており、おとなしいのでいつも放し飼いにしていた。


ほんとうは放し飼いはよくないんだが、近所からの苦情もなく、いつも家の前で寝ていた。
犬小屋はちゃんとあるのだが、なぜか家の玄関前と向かいの家の間の道の垣根によりかかるようにしていつもゴロゴロしていた。


そんなある日、飛龍がいなくなった。



俺と弟は、近所を探しまわった。


それから数日。


近所のおばちゃんの家の塀の内側で、死んでいる飛龍が見つかった。


おばちゃんの話だと、時々やってきてはそこで寝てたりしていたらしい。


ハッキリした死因はわからない。
でも、どんなに苦しかったのか、どんなに怖かったのか、どんなに寂しかったのか、助けてやれなかったことをものすごく悔やんだ。


たぶん、弟も同じ思いだったのだろう。
弟は、玄関の中で冷たくなって動かない飛龍のそばに、一晩中ずーっと一緒にいた。


弟のほうが、俺よりも飛龍を可愛がっていたから無理もない。
俺は飛龍をいじめていた時期もあったが、弟は飛龍の生涯をずっと愛し続けていたから。


いまでも時々、飛龍に似た犬を見かけるたびに、飛龍を思い出す。
飛龍とはほんとうにたくさんの思い出があった。


俺はいままでも、これからも、ずーっと飛龍のことを忘れない。
そして、俺がいつか死んだあとは、あの世でまた飛龍に会いたい。


そしたら、きっとまた、昔のように小躍りするように俺のところに駆け寄ってきてくれるかな。


2014年6月4日水曜日

俺と犬。


俺のいままでの人生において、つねに犬たちが傍にいた。


小学生の時には、どこか近所で拾ってきた、茶色の雑種の「ちび」。


家では飼えないから、親に内緒でこっそり近くのあばら家で弟と一緒に飼っていた。


とってもかわいらしくて、すごく可愛がっていたのだが、ある日どっかにいなくなってしまった。


名前どおり、本当にちびのままの姿しか知らないままだった。
あれからどこかでちゃんと成長して、ちびじゃなくなったのだろうか?


あの頃、保健所の野良犬狩りが盛んだったので、もしかしたら保健所に連れていかれてしまったのかもしれない。


でも、もし仮にそうだったとしても、親にも内緒で飼っていたし、小学生の俺にはどうすることもできなかった。


できることといえば、保健所になんか連れていかれていないで、どこかで元気に生きていると信じることだけだった。


いまでも、ちびがあれから元気に育って、幸せな犬生を送ってくれたのだと願いたい。